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尊く美しい養蚕文化と桑畑を伝え継ぐ

阿部 倫子
(あべ みちこ)
宮城県 石巻市出身
地域貢献型/元隊員
 地元の養蚕農家によって守られてきた美しい桑畑が広がる筆甫地区。その山間に佇む元養蚕農家の目黒登美子さん宅で、元地域おこし協力隊の阿部倫子さん(45)はまるで実家で過ごしているかのように、桑の葉から作った桑茶を湯呑みへと注いでいく。「すっかりお世話になりっぱなしで」。阿部さんがそう呟くと、隣で見守る目黒さんも「私の方こそ生きがいをもらって」と目を細め、互いに顔を見合わせる。
 阿部さんは現在、蚕糸文化を継承する「SILKWa(しるくわ)」を立ち上げ、目黒さんをはじめとした地元の養蚕農家の協力のもと、「丸森シルク」の魅力を町内外に伝えている。時に迷い、壁にぶつかることもあるが、「この尊い文化を守りたい」という想いと、共感の輪を原動力に、仲間たちと一歩一歩その歩みを進めている。

「なんでも経験してみろ」という祖母の言葉を胸に

 転勤族家庭に生まれ、県内外で子ども時代を過ごした阿部さん。当時を「友達を100人作ってやるっていつも前向きでした」と振り返る。中高生時代には留学生との交流を機に英語への興味が湧き、大学ではイギリスでのホームステイも経験。そうした中で膨らんでいったのは、海外への好奇心よりもむしろ「日本をもっと知りたい」という想いだった。
 大学卒業後は仙台市内の広告代理店に勤めたものの、祖母からかつて掛けられた「なんでも経験してみろ」という言葉に背中を押されて転職を決意。一時は沖縄県の離島でも暮らし、受け継がれる昔ながらの風習に、その土地に確かに根付く言葉にはできない“何か”を感じ、心を掴まれた。

丸森に帰ることは「故郷に帰ること」

 そうした日々を経たある日、目に止まったのが丸森町の「里山暮らしを体験できる宿」。実際に訪れると、ここにも言葉にはできない“何か”を感じるとともに、四季を感じられる東北の風土にも改めて魅了され、以来、頻繁に足を運ぶようになった。「いっそ丸森に住んだら?」。そう言われるようになった頃、現在も働く観光案内所の仕事に巡り合い、移住を決めた。
 ただ、東日本大震災後の数年間は、石巻にある母方の実家のたらこ屋が被災したこともあり、丸森を離れた。阿部さんは、たらこ屋のために何かできることはないかと、叔母が仙台市内で開店した「たらこcafe」を手伝い、さらにその後は、仙台のNPO法人で地域づくりも学んだ。しかしその間も、丸森のことを考えると、たくさんの会いたい顔がすぐに浮かんでくる。時間を見つけては丸森に通い、自然とそれを「里帰り」と呼ぶようになっていた。そうして2017年、今度は地域おこし協力隊として丸森に里帰りした。

小さな繭から紡がれるたくさんの出会い

 隊員任期中に養蚕文化に出会い、2019年の退任を機に「SILKWa」を立ち上げて約5年。「家庭で養蚕に親しむ『町民養蚕』も広めたいですし、家庭に眠る丸森シルクの着物を使ったファッションショーもやりたい。それと…」と、阿部さんの中には様々なアイデアが次から次へと浮かんでくる。
 こうしたアイデアを実現へさせようと思えるのも「共感してくれる方々がいるからこそ」と阿部さん。蚕糸文化の継承は一筋縄にはいかず、悩みも絶えないが、「その分だけ新しい出会いがあると思うとワクワクしますし、そんな楽しみが未来にある丸森は私にとって本当に幸せな場所」と、多くの出会いをもたらしてくれる手のひらの上の真っ白な繭を、愛おしそうに優しく包み込んだ。
SILKWa
事業内容:
蚕糸文化の継承活動、養蚕体験、丸森シルクや桑の葉を活用した商品の企画・製造・販売

TEL:
090-5833-8164

MAIL:
info@silkwa.jp

WEB:
https://silkwa.jp/(SILKWa)


https://hippogaga.thebase.in/(ひっぽの桑茶)

Instagram:
@silkwa.marumori

文・口笛書店/撮影・江森 康之

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