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正解のない“生き方”に寄り添いたくて

柴田 北斗
(しばた ほくと)
宮城県 仙台市出身
起業/元隊員
 築100年を優に超える古民家を、地域おこし協力隊のOBOGが改修して開設した「シェアハウスたね家」。ここを拠点に、現在はキャリアコンサルタントとして、県内・東北で活躍しているのが元隊員の柴田北斗さん(33)だ。今でこそ東北への愛着を口にする柴田さんだが、「東北はつまらない場所だと思っていました」とかつての自身を振り返る。
 仙台市出身で、教師である母親と、学生時代の恩師の影響で教員を志し、大学まで県内で過ごした。在学中の企業インターン中に東北への熱い想いを抱く人々にも出会ったが、「第一線で働くなら東京」と、卒業後は“修行”として東京の民間企業に就職した。

「成長したら帰ろう」と思い続けた東京の日々

 「東京は刺激的で学びの多い場所でした。そして同時に、当たり前過ぎて感じられていなかった東北の豊かさに気付かされた日々でもありました」
 東京では人材派遣に関わる業務に奔走した。「成長したら東北に帰ろう」。そう思い続け、気が付けば4年近くが過ぎたある日、大学時代のインターン先の社員(当時)から声をかけられた。「いつまでもバッターボックスの手前で素振りをしていても、実際にバッターボックスに立たなければどんな球が来るかは分からないよ」。今、東北で何が求められているのか、それは現場に立ってこそ分かるもの。この一言が契機となり、2018年1月、丸森町地域おこし協力隊としてUターンした。

仕事だけでなく、趣味や暮らしも含めたキャリアを

 同じ宮城県内とは言え、「丸森は縁もゆかりもなくて、もはや海外でした」と冗談混じりに語る。着任当初は役場内に席が用意され、職員と肩を並べるという特殊な環境だったが、「皆さんが熱い想いを持って働いていてかっこよかった」とそれまでの公務員のイメージが一変した。
 こうした出会いの中で柴田さんの胸に生まれたのが、「正解を教える教育ではなく、正解のない“生き方”に寄り添う仕事をしたい」という想い。そこで着任後は「ヒトラボ TOHOKU」を立ち上げ、キャリアコンサルタントとして、仕事だけなく、趣味や暮らしの分野でも個人の豊かな生き方に寄り添う活動をスタートした。「人は自分のことが一番分からないもの。だからこそ、私との対話でそれぞれの方が自分の生き方に向き合ってもらえれば」と、現在は「キャリアモデル開発センター仙台」の運営や、地域おこし協力隊のキャリアサポートなど活動の範囲を広げ、人々に寄り添いながら、柴田さん自身もまた自らの生き方を見つめ続けている。

私はきっといくつもの土地で活動する“風の人”

 丸森町に暮らしてもうすぐ7年となる中、「私はきっと、地域に根付く“土の人”ではなく、いくつもの土地で活動していく“風の人”。丸森を拠点の一つにしながら、より活動の幅と範囲を広げていきたい」と柴田さん。それでも「私の想いを育ててくれた丸森で過ごすこの時間は、私にとって特に大切な時間です」と噛み締める。
 盆地特有のじっとりとした暑さが続く夏の丸森町。柴田さんは「今もまだこの気候は苦手なんですよね」と日差しに目を細め、いつしか愛着に満ちた場所となった景色の中を歩きながら、「気候が苦手とは言ったものの、盆地ならではの霧の立ち込める朝の景色が好きなんです。私もやっぱり、まだまだ自分のことが一番分からないですね(笑)」と額の汗を拭った。
ヒトラボ TOHOKU
事業内容:
キャリアサポート、研修、ワークショップ、インターンコーディネート等

エリア:
宮城県内、東北地方

創業:
2018年

WEB:
https://hitolabo-tohoku.com

X:
@hokutoll

文・口笛書店/撮影・江森 康之

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