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猫も人も幸せに暮らせる町に

大浦 友子
(おおうら ゆうこ)
宮城県 塩釜市出身
起業/現役隊員
 「昔は犬派だったんですが、今となっては完全な猫派です」
 2023年に地域おこし協力隊として移住した大浦友子さん(45)は現在、小斎地区で保護猫活動と丸森町に伝わる猫神文化の発信に取り組んでいる。元々動物好きで、野良猫を保護したのを機に、化粧品販売員の傍ら、保護団体の預かりボランティアとして活動するようになり、「気まぐれでツンデレな猫に魅了されてしまいました」と目を細める。
 預かりボランティア時代には、活動を継続する難しさも目の当たりにした。「財源は支援者の寄付とスタッフの自己負担。続けたくても続けられない方が多いんです」。どうにか寄付だけに頼らない方法はないか。そう考え続けるうちに、保護猫に触れ合える「猫カフェ」や「猫と過ごせるゲストハウス」といったアイデアが浮かぶようになり、何より「大好きな猫に関わる仕事をしたい」という想いが膨らんでいった。

不安を和らげてくれた地域の方々の温かさ

 丸森町地域おこし協力隊について知ったのは、それらのアイデアの実現を模索する中でのこと。調べると丸森町は、養蚕の大敵のネズミを駆除する猫を「猫神」として祀った猫碑が日本一とされる80基以上もある「猫神文化」の町であることを知った。「ここしかない」。そこからはとんとん拍子で話が進んでいった。
 そうして移住した小斎地区は、高齢者が多く、街灯の少ない地域。そのため日が暮れると「目を開けても閉じても真っ暗で最初は怖かったです(笑)」とのこと。しかし、そんな不安を和らげてくれたのが地域の方々。移住前から猫カフェの構想を知ってくれており、「楽しみだあ」と温かく迎えてくれた。次第に60代の方々ともLINEでよく連絡を取り合うようになり、地震があった際には「大丈夫だった?」という連絡が、慣れない土地の中でとても心強かった。

リアル猫神様に溺れることのできる空間へ

 現在は、自宅の古民家や納屋を改装し、30匹ほどの猫を保護している。母屋の屋根は猫神様の鳥居をイメージした朱色に彩られ、「この子たちはリアル猫神様なんです」と猫たちに優しい眼差しを向ける。保護したばかりの頃は警戒心をむき出しにしていた猫もすっかり人懐っこい性格になり、中でも看板猫の「マル」は、大浦さんが名前を呼ぶと甘えるように擦り寄ってくるほどだ。譲渡会も実施しており、今後は毎月開催できる体制を整えていく。
 また、猫カフェとゲストハウスの準備も着々と進めており、「猫に囲まれるというより、猫に溺れることができるのを売りにできれば」と思い描く。そしてそこを、人にとって癒しになるだけでなく、猫にとっても人慣れ訓練や里親との出会いにつながる、双方にとって幸せになれる空間にしていくことを目指す。

「猫と言えば丸森町」と言ってもらえるように

 長く過ごした港町から、丸森に越してきてもうすぐ1年。「夕方の田園風景を車で走っていると、不思議な安心感に自然と『ただいま』って思うようになりました」と大浦さん。これから猫神文化を発信し、日本中に、そして世界中に「猫と言えば丸森町」と言ってもらえるようになるのが目標だ。周囲には「猫を見習って少しは休みなよ」とも言われるが、「今は休むよりも前に進みたくて」と邁進する日々。そんな大浦さんのそばで猫たちは、それぞれに気まぐれで穏やかな時間を過ごしている。
事業内容:
保護猫活動、猫カフェ(今後)、ゲストハウス(今後)等

住所:
丸森町小斎

TEL:
0224-78-1111(小斎まちづくりセンター)

Instagram(まるもふ猫神プロジェクト):
@marumofu111

YouTube(まるもふ猫神プロジェクト):
https://youtube.com/channel/UC_cngN8W_doJncXlW9VAN0A?si=uWgEtDlY8X_QYA4a

文・口笛書店/撮影・江森 康之

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