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自分のお気に入りが家族のお気に入りの場所に

河野 久美
(こうの くみ)
福島県南相馬市出身
地域貢献型/現役隊員
 丸森町大内地区にある直売所「いきいき交流センター大内」に隣接する「MARUMORI CAFE」。木の温もりにあふれた店内のショーケースには、猫神文化で知られる丸森らしく、猫の肉球をかたどった大判焼きの「猫神の手」が並ぶ。
 「ね? 可愛いですよね。私もいつも『可愛いなあ』と思いながらひっくり返しているんです。可愛さで笑顔になって、美味しさでまた笑顔になってもらえる。そんな姿を見るのがやりがいです」
 カフェを運営する株式会社フードスタジオマンマに所属し、新たな特産品の開発などを担う地域おこし協力隊の河野久美さん(49)は、自身が開発に携わり、手元で今まさに焼き上がる「猫神の手」を自慢げに愛でながら、そう日頃の喜びを口にする。

看護師として命と向き合った23年間

 福島県南相馬市に生まれ、3歳年上の兄の背中をおいかけて遊ぶ元気な子どもだった。また、ものづくりへの興味からケーキ屋さんやパン屋さんに憧れた幼少期もあったが、高校卒業を控えて選んだのは母親と同じ看護師の道。千葉県の看護学校に進学し、卒業後はそのまま千葉県内の病院に就職した。
 その後、結婚、出産を経て、子育てと両立しながら、外来や訪問看護、保育園などの現場で23年間にわたり看護師として人々に寄り添った。常に命と隣り合わせの緊張感に押しつぶされそうになることもありながら、「『河野さんのおかげで、安心して過ごせたよ』と言ってもらえると、疲れが吹っ飛んでしまって」と当時を振り返る。

窓から見えた田んぼと青空に魅せられて

 転機は、福島の実家に帰省するついでに、高校時代の同級生が経営する丸森のカフェに足を運んだ2022年の夏。そのカフェこそMARUMORI CAFEであり、これが河野さんにとって初めての丸森だった。「カフェの窓から見える景色の美しさに感動して」。外に出て、コロナ禍で着けていたマスクを外して深呼吸をすると、心まで晴れ渡っていくのを感じた。「丸森に住めたらいいのになあ」。そう思っていたところに夫の仙台転勤が決まり、河野さんの実家にも近いということもあって、長女が小学校を卒業するタイミングで家族で丸森に移住した。

朝と昼と夜のそれぞれの豊かさ

 そうして暮らし始めた丸森には、お店や病院まで距離があるといった不便さも確かにありながら、一方で、朝は鳥の鳴き声で目が覚めて、昼には一面の緑に包まれ、夜には家族で星空やお月様が眺める豊かな時間があった。「本当にここに来て良かった」。当初は移住に不安を抱いていた長女も、友達に恵まれてのびのびと暮らしており、「家族で東京に出かけて帰ってきた時、田んぼや緑が広がる景色を見た娘が『ああ、帰ってきたねえ。やっぱ落ち着くね』って言ってくれたんです。それが一番嬉しかったですね」と河野さんはしみじみと語る。
 「初めて丸森に来たあの日が晴れていて本当にラッキーでした。だって、もし雨だったりしたらこの景色の本当の良さに気付けなかったかもしれないので」と冗談めかして笑う。そして、「今も仕事中に思わず見とれてしまう時があるくらい、何年経ってもこの景色は私のお気に入りです」と、自らの、そしていつしか家族のお気に入りの景色となった窓の外の緑と青空を、もう一度噛み締めるように見つめていた。
MARUMOEI CAFE
事業内容:
カフェ運営、猫神の手焼き製造販売、イベント出店等

住所:
宮城県丸森町大内字町西7

TEL:
0224-87-8434

営業時間:
11:00-16:00(ラーメンの提供は11:00-14:00)※夜は予約制

定休日:
月曜日

Instagram:
@marumori_cafe

文・口笛書店/撮影・黒川 康平

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