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心と体と、そして環境に優しい取り組みを

山下 久美
(やました くみ)
神奈川県出身
起業/元隊員
 蜜蜂の巣からハチミツを採った際の副産物として採取される「ミツロウ」。キャンドルなどに用いられるその自然素材を生かした、洗って繰り返し使うことのできる「ミツロウラップ」を手掛けるのが、元地域おこし協力隊で、「マメムギモリノナカ」の代表・山下久美さん(43)だ。鍋で溶かしたミツロウを、コットン生地に垂らし、刷毛で伸ばして染み込ませるその姿は、まるで心を込めて調理する料理人のようでもある。

ふと訪れたサロンから始まった現在への道

 神奈川県に生まれ、親の転勤により、北海道を経て仙台市に暮らした。旅行会社に就職した姉の影響で海外に憧れ、高校は英語科に進学したものの、卒業後は一般企業の事務職として働いた。
 退職を経て、一時はやりたいことが見つからないままアルバイト生活を続けた。立ち仕事で疲れたある日、ふと訪れたのがリフレクソロジーサロン。山下さんは、体を軽くしてくれる技術に感動すると共に、客室乗務員を思わせる制服にかつての憧れを重ねた。「今考えると、あの日偶然に良いサロンに巡り会えたのは幸運でした」。帰り際、セラピスト専門スクールのパンフレットを手に取ると、すぐに応募した。
 その後はセラピストとしてやりがいに満ちた日々を過ごした。一方で、本当の意味で健康になってもらうためには生活習慣や環境が大切さであることも痛感。そうした想いを抱える中、独立に向けて足を運んだセミナーで教えられたのが、丸森町の地域おこし協力隊の募集だった。
 ただ、丸森は全くの見知らぬ土地。そこで実際に訪れてみると、たちまち丸森の人々の温かさのとりこになった。「みなさんが『丸森においでよ』って言ってくれて。いい町なんだなって」。決断するのに時間はいらなかった。

活用し切れていなかったミツロウと出会って

 丸森で出張セラピストとして働くことは決めていたものの、「それだけでは地域との関わりが薄いのでは」と考えていた時に知ったのが、町内の養蜂園で活用し切れていなかったミツロウの存在。そして、セラピーのクリーム以外の活用方法を探る中で出会ったものこそ、ミツロウラップだった。登山サークルの友人と「ミツロウラップでおにぎりを包んで、山頂で食べたら最高じゃない?」などと妄想を膨らませながら試行錯誤し、商品を完成させた。
 しかしその矢先、台風19号が丸森を襲う。出張先となるはずだった拠点も被災した中でまずはミツロウラップの販売からスタートすると、この取り組みが全国的な賞を受賞するなど注目を集めた。
 さらにその後は、JICAと丸森町が取り組む「ザンビア丸森プロジェクト」で、ザンビアを訪れる機会も得た。山下さんにとってアフリカは憧れの地。「巡り巡ってそんな機会が訪れるなんて感激でした」と不思議な縁を噛み締める。

夜が早くて暗いのも丸森の魅力の一つ

 丸森大橋近くの土手を歩きながら「この開放的な景色の中を散歩するのが好きなんです」と山下さん。丸森は都市部に比べて便利だとは決して言えず、午後9時には商店も閉まり真っ暗になるのが当たり前だ。しかし、「私は、夜が早くて暗いのも丸森の魅力の一つだと思うんです。ちゃんと休める夜があるということですから」と新鮮な見方で丸森を見つめ、「だからこそ、いつも人が温かいのかもしれませんね」と一つの謎が解けたような笑顔を見せた。
マメムギモリノナカ
事業内容:
ミツロウラップの製造販売・ワークショップ、丸森町起業サポートセンターCULASTA運営

場所:
丸森町字町西25 齋理屋敷CULASTA

WEB:
https://www.mamemugi-m.com/

note:
https://note.com/mm_ky

Instagram:
@mamemugi.bee_wrap

文・口笛書店/撮影・江森 康之

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